ミヤコグサ2000コンソーシアムのご案内 ---日本発の基盤研究として---

モデルマメ植物・ミヤコグサに興味を持っておられる方、分野・規模は問いません。基本方針に賛同される方、メールを下さい(hayashi@res.bio.eng.osaka-u.ac.jp)。
 



1. はじめに

・なぜマメか?

主要栽培作物としてマメは重要な役割を果たしてきた。デンプン源としてはイネ、トウモロコシ、コムギなど数種の単子葉植物が栽培種として選ばれ、タンパク源としてはマメ、とくにダイズが栽培される。植物から供給される栄養源を考えるとき、マメの研究は非常に重要である。またマメが種子にタンパクを蓄積するメカニズムは、農業的な応用の面からも意味深い。形態形成の面からも特徴的な点がある。例えば葉の形をみたとき、複葉の形成過程は、茎から葉への複雑さを増す進化という点からも非常に興味ある現象である。さらに、マメ科はキク科とならんで種の多様性に富んでいる。分類学的に種の分化を見たとき、マメを材料にした適応分子進化の研究によって植物の潜在的な能力を明らかに出来る。そしていうまでもなく共生窒素固定能を持つ植物として、土壌学的にも、形態形成の観点からもマメは重要な研究材料である。

以上のことから、これからマメを研究することは植物の機能を総合的に解析する上で大きなポイントとなるであろう。

・モデルマメ科植物の必要性

生物は多様性に富みその機構を解明するには多くの情報が必要である。マメの研究においてもそれは同様で、ある現象はダイズで、また別の現象はエンドウで、といった具合ではそれぞれの整合性をとることは困難である。アラビドプシスの例で明らかなように、昨今の植物分子遺伝学の大きな発展は1つの植物種を多くの研究者が集中して解析した結果である。

  そこで、マメを分子遺伝学的に研究するには何が適しているかという問題がもちあがる。従来の経験から、

 1. 2倍体であること

 2. ライフサイクルが短かく、かつ実験室で生育可能なこと

 3. 自家受粉ができること

 4. ゲノムサイズが小さいこと

 5. 形質転換が可能であること

などが必要条件としてあげられる。これらを満たしているモデルマメ科植物としてミヤコグサが注目され、世界の研究者に材料として用いられてきた。

・応用面での意義(シンテニー)

モデルマメ科植物ミヤコグサを集中的に研究する結果、マメに存在する(あるいは植物全体の)多くの現象が系統的に明らかとなる。その次の段階として、実際的な個々の現象の応用をそれぞれのマメ植物でおこなうことが出来る。ゲノミクス的な観点から、基本的にすべてのマメは同じ遺伝子のセットを持ち、単にDNA量としてみたゲノムサイズが異なるという、シンテニーの存在が明らかとなっている。この考えをふまえると、ミヤコグサで遺伝子解析を包括的におこなうことはすべてのマメの研究にとって有意義なことである。

Medicagoとの競争

しかし、最近になってもうひとつのモデル候補、Medicago truncatulaが急速に勢いをつけてきた。両者における分子遺伝解析の基盤形成は盛んであるが、アメリカとフランスにおいて大型の予算がついたこともあり、Medicagoは遺伝地図の作成、タグラインの作出、チップの作成、根粒菌ゲノム解析においてミヤコグサより進んでいる。基本的にマメのモデルは一つあれば十分なので、今後先にインフラが整った方に世界的に大きく研究者が流れることが予想される。

Medicagoの研究はアメリカとヨーロッパの研究者で取り仕切られているので、日本の研究者がイニシアチブをとることは非常に難しい。日本原産のミヤコグサを真のモデルマメ科植物にするためにも、国内のマメに関心のある研究者がそれぞれの役割を明確にして、早期に基盤形成に取り組んでいく必要がある。
 



2. 基本方針

・情報の公開性

コンソーシアムを立ちあげる第一の目的は、日本におけるマメの分子遺伝学的研究の活性化である。現在、ほぼすべての基盤研究は欧米に依存している。その理由として、

 ・1つ1つのラボが小さい

 ・基盤研究に対する予算が少ない

 ・したがって研究成果の有効利用ができない

ことがあげられる。そのような研究者が1つの場所で話し合い、お互いの成果を利用しあうことで全体的に能率的な研究を進めることをめざす。ミヤコグサにおいては日本が世界を活性化するようにしたい。

しかし予算のバックグラウンドなしでそれを進めるには多大の困難が予想される。これを円滑におこなう唯一の方法は密度の高いネットワークの形成である。コンソーシアムのメンバーは、共通基盤の研究成果に関して公開を原則とする。それが他のメンバーの利益につながり、ひいてはメンバー全体の活性化によってそれぞれのメンバーが恩恵を受ける状況を理解していただきたい。

・基盤の充実

後述するように、EST、遺伝マーカ、高効率形質転換法の確立など公共に利用できるリソースの充実を急務とし、これへの貢献を最優先課題とする。

・対等な交流

メンバーの状態によって、基盤研究への貢献度が異なることは容易に考えられる。コンソーシアムでは多くの研究結果をもたらすように強制されることなく、公共性を旨とし、メンバーの屈託ない要求を問うていく場を提供する。

・ボランティア性、各人の役割

  前述したようにコンソーシアムは自発的な組織であって予算の裏付けはない。各々のメンバーは無償の努力をすることでコンソーシアムのメンバーとしての利益を得ていただきたい。小さい研究室・少ない予算で出来ることをコンソーシアム全体として協議したい。

・共同研究

  自発的な共同研究の立ち上げに関してもコンソーシアムとして便宜を図りたい。基本的にコンソーシアム内に後述するコミュニティーを立ち上げ構成メンバーを公募することで、共同研究のきっかけを提供したい。

・広報活動

  現在ミヤコグサ研究が手薄な農学系を中心に、メンバーが学会でのアナウンスに力を入れる。


3. かずさDNA研の役割

  コンソーシアムのメンバーに加わるかずさDNA研究所は、ご存じの通り世界の分子遺伝学に多大の貢献をしている、日本で数少ない公共性をもった研究機関である。かずさDNA研はミヤコグサの実生EST20,000以上を2000年3月に公開予定である。さらにSTSマーカの作成のために、Gifu B-129、Miyakojima MG-20-S7の2つのラインで根粒ESTにもとづく3'UTR配列の決定をおこなう予定である。また、ミヤコグサ根粒菌の全ゲノム配列に関しても解析をおこなう予定である。

  これを受け、コンソーシアムでは塩基配列の有効利用を目的に早期に協議をおこなう。関心のあるESTクローンに関しての情報検索はとくに手続きを必要としない。公開前に興味深いクローンがあれば共同研究というかたちで配布可能。チューブリンやアクチン等の遺伝子は無償配布可能。公開以降クローンの配布は行うが、その前にメーリングリストを通じ、関心のあるクローンをメンバーにサーチしてもらうようアナウンスする。公開を希望しないクローンがあればかずさDNA研と交渉する。

  また、2000年夏に技術講習を中心にした第2回ミヤコグサ分子遺伝学ワークショップをかずさDNA研で開催する。
 


4. 最優先課題

  共通基盤の充実のために最優先課題を設ける。現在のところ、形質転換、根粒菌ゲノムの解析、遺伝子地図の作成に関してコミュニティーをコンソーシアム内に設け、中心となって貢献するメンバーを選定し、Web上で情報公開していく予定である。新たに必要となった課題に関しても原則としてコミュニティーを設け、同様な方法で情報公開に努める。


5. コミュニティー(分科会)に関して

  5-1. 形質転換

1. 種子、ミヤコグサ栽培のプロトコール、シロイヌナズナのプロトコール(実際の方法の写真付き)を提供する

2. 必要であればベクターがはいったアグロバクテリウムも提供する

3. 公募して、30研究室に限定して1. 、2. を行う

4. 結果は、失敗した場合も含めてコミュニティーに報告してもらう

  5-2. ミヤコグサ根粒菌 Mesorhizobium lotiは分子遺伝学的にも生化学的にも情報が限られている。Sinorhizobium-Medicagoへの対抗だけでなく根粒菌自体のfunctional genomicsを視野に入れ、効率的な協調を目指す。具体的には、以下の3項目について、研究グループ同士の重複を極力避け、菌株・技術情報の共有を行う。 1. 遺伝子破壊株の系統的作製と相補系の開発:破壊方法・領域の分担・分業

2. ミヤコグサの共生変異株の解析を容易にする根粒菌変異株セットの作製

3. 根粒菌・バクテロイドの生化学解析

  5-3. 遺伝地図の作成 ・AFLP

   プライマーセットの配分に関しては協議予定。分担が決まったメンバーはGifu B-129とMiyakojima MG-20-S7で多型を確認し、コミュニティーに知らせる。マッピングにはF2・128個体をもちいる。かずさDNA研はRILsを供給する予定。公表方法、実施期間、DNAの配布に関しても協議する。

・STSマーカ

  かずさDNA研のデータがそろい次第、多型に応じて分担メンバーを決定する。



6. 種子および変異体の配布

  Gifu B-129とMiyakojima MG-20-S7の種子の配布、変異体の作出と配布に関してのセンターは協議予定。変異条件に関してのコミュニティーも立ちあげる予定。

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